「フクシマの医療人類学」の著者、辻内さんの「本書の願い」をご紹介させていただきます。(弁護士 猪股 正)

 

本書を通じて、 世界のどこの地域においても、 原発事故災害がひとたび起きれば、 どれほどの被害がその地域にもたらされ、 どれほどの苦悩や不幸に 住民達が曝されるのかを、

「情緒」と「知性」 の双方で感じ取ってもらえることを 目指している。

ものごとの変革には、 「怒り、悲しみ、憤り」といった情感が 激しく揺り動かされることが 必須だと筆者は考えている。

感情が動くことで、 自分も何かしなければならないと モチベーションに火が付き、 その後に問題解決に向けた 知性が動員されるのである。

過酷な現実から立ち上がろうとする 人々の力強い意志と行動は、 読む者に勇気と希望を与えてくれる。 自分自身が原発事故災害に合い、 数え切れないものを失いながら、 何がそこまでの活動の原資となっているのだろうか。

彼らの生き様は ある意味で私達にとっての師匠であり、 苦しみを生き抜く術は 私達にとって生きた教科書なのではないだろうか。

原発事故に関心のある方もない方も、 是非本書を手に取り、 原発事故災害について 理解を深めていただければ幸いである。

理解することによって 差別や偏見を無くしていき、 私達が二度と同じ過ちを起こさないように、 今後の社会作りに 参画していっていただければと願う。

辻内琢也(早稲田大学人間科学学術院教授)

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